ドラッグの功罪

世の中に「大麻擁護論」を唱える方がいます。




どうも、まるごです。



昨夜
ケタミンという薬
という記事で、ドラッグに触れたのですが、
話が行ったり来たりして、
論旨がまとまらなかったので、
まとめというか、補足を書きたいと思います。





で、まず冒頭の大麻合法論です。


実際オランダなど、一部大麻合法の国もあります。




大麻より煙草の方がよっぽど健康に悪い

煙草が合法なんだから、
大麻も合法にすればいいのに。



などという話を聞いた事があると思います。




確かに、発癌性などの身体毒性については、
たばこの方が上です。




しかし、そもそも、
長期的な健康被害のみで
ドラッグを論ずる事が間違いです。




ドラッグを評価するには、

・薬としての薬効、その有益性と希少性

・毒物としての毒性

犯罪親和性

の、3点から考えなければならないと思います。



総じて、興奮剤、幻覚剤と呼ばれる薬には
暴力系の事件との相関が問題になります。

ドラッグ使用中に、
攻撃性が上がって犯罪に走る傾向が強くなります。

興奮系薬剤が出回る町は、
暴力系の事件が多くなり、治安が悪くなる。

体を汚染する以外に、社会を汚染します。




そして、鎮静系の薬剤には、
レイプドラッグ
という側面が、必ず付きまといます。

自分で使う以上に、
「他人に飲ませて」
という使い方での犯罪が問題になります。




これらを踏まえて、有益性・有害性で
各ドラッグを独断で評価していきたいと思います。



・大麻(マリファナ)
今の所、医薬品としての有益性は求められていない。

末期癌での緩和目的、という意見もあるが、
モルヒネや抗不安薬を上回る
ベネフィットがあるとは思えない。

ラリッている間は、正常な判断が出来ず、
他のハードドラッグにも移行しやすい。
暴力系の犯罪親和性も高い。

よって、百害あって一利なし
厳しく取り締まる必要がある。
刑がまだ軽いかも知れません。

・LSD
大麻に同じ

・アンフェタミン
いわゆる覚せい剤。
酒井のり子事件で問題になったドラッグ。

薬効として、ナルコレプシーや
重症の鬱に効果があると思われるが、
依存性を容易に獲得しやすく、
薬剤の調整は非常に困難。

(日本では、メチルフェニデート(リタリン)が
保険適応になっており、向精神薬扱いとなっている。)

過剰投与で、中枢神経性に
心血管系に異常をもたらし、
心停止を起こす。

毒性も強く、犯罪親和性も高い、危険なドラッグ。


限定的に医薬品としての可能性はあるが、
危険性が高過ぎるので、扱いは難しい薬剤。
医薬品としての適応は取らない方が良いと思われる。

管理は現状のままで良いが、
罰則は重くしても良いと思います。

・MDMA
押尾事件で問題になったドラッグ。

(参考)
押尾容疑者VS殺人刑事 解明へ続く取調室の攻防

覚せい剤系の薬剤だが、幻覚作用も併せ持つ。

アンフェタミンと大麻の

悪い所を合わせたような薬剤


残念なことに、医薬品として認められた薬効はない。
(幻覚作用があるので使えません)

毒性はアンフェタミンと同じ。
依存性もアンフェタミンと同じ。

そのくせ気軽というイメージがある。
水を沢山飲んだら薬抜きが出来る
などという詐欺まがいの情報まで流れている。

最悪のドラッグです。

厳しく取り締まり、撲滅すべきドラッグ。

・コカイン
興奮系薬剤。
最初に使われた局所麻酔薬という側面を持つ。
ただし、今はもっと安全で良い
局所麻酔剤があるので、
コカインの臨床的価値は
ないと言っていいでしょう。

毒性はアンフェタミンと同じで、
過量投与で心停止を起こします。

犯罪親和性も高く、危険なハードドラッグ。
やはり厳しく取り締まるべきと思われます。

・モルヒネ
オピオイド作動薬。
フェンタニルなどの合成麻薬もここに入ります。

画像


鎮痛作用が強く、薬として、
他剤では代用の効かない薬効を持ちます。

鎮痛目的に適正に使えば、
依存性も無く、むしろ使いやすい鎮痛剤。

ただ、嗜好目的で使うと、
容易に依存性を獲得してしまう。

また、過量投与で、
呼吸抑制が起こり、呼吸停止を起こす事もある。

処方箋の厳重な管理など
厳密な規制が必要な薬剤ではあります。

ただし、日本では誤解が多く、
むしろ不適切なまでに、
使用に制限が掛かっている現状があります。

疼痛コントロールにおいて、
もう少し広く使われるよう、
医師、患者ともに正しい知識を
得る必要があると考えます。

・ヘロイン
モルヒネと同じアヘンアルカロイドだが、
中毒の問題が大きく、医薬品としては認められていない。
医薬品として利用する必要もないと思われます。


・ケタミン
NMDA受容体拮抗薬。
麻酔薬でありながら鎮痛作用を持つ。
他の麻酔薬には無い作用を持っていて、
代用となる薬はない。
臨床現場で広く求められる薬。



幻覚作用があるが、鎮静剤であり、
攻撃性は上げないと思われる。

むしろ、レイプドラッグとして
これほど使いやすい薬はないと思われるので、
そういう意味では非常に危険な薬剤。


ただ、他の麻酔薬と同じように、
病院等での管理を厳しくすればよく、
譲渡、売買について取り締まるだけでも、
良いと思われます。

現在、麻薬及び向精神薬取締法において
麻薬指定を受けましたが、
向精神薬の扱いでもよかったのではないか、
と、今でも考えています。

確かに依存性も形成しやすく、
危険な薬剤ですが、
現在日本では内服薬はないので、
基本出回るはずの無い薬剤です。


あとで述べる抗不安薬などと違って、
処方されないので、一般人が持っていることが不自然。

故に、向精神薬という括りで十分規制できるはずです。



出来れば、向精神薬の違法な売買、
譲渡の罪をもっと重くすべきかと思いますが。


・ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠剤
トリアゾラム(ハルシオン)、
ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)など。

主にレイプドラッグとして問題になった薬剤。

最近でも、薬で眠らせて
民宿で盗難を繰り返す事件があったばかり。

保険適応の医薬品なので、
病名がつけば、普通に処方して貰える。

故に不届き物が、詐病で処方を受け、
転売する問題が未だ後を絶たない。

精神依存性が軽度。

医薬品としての重要性が非常に高いので
過剰な規制は、ケタミンのように
診療に支障をきたすので、考えなければならない。

現状では、抗精神薬として、
許可の無い販売や、
譲渡目的の所持を規制していますが、
現状で規制は困難か?


詐病との鑑別は非常に困難で、
もし、処方のハードルを上げれば、
精神疾患治療に大きく制約が生じてしまいます。

不自然な患者については、
病院以外で調査をしてくれる、
そういう専門機関があればよいと思います。

流石に証拠も無いのに警察に言えないし、
また警察も取り合ってくれない。

かといって、医療機関に調査を強いるのは
負担が大き過ぎて、診療が出来なくなります。


警察と医療機関の間に立つ
第三者機関があれば、
良いと思うのですが…。



ある意味、所持そのものが犯罪で無い
これらの薬の方が、問題の根が、
深いとも言えるのではないでしょうか。








以上、現場からまるごがお伝えしました。


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この記事へのコメント

2009年12月14日 14:55
久しぶりに良い考察記事に出会いました。
一般的なドラッグである、煙草とアルコールについてもご意見をお聞きしたい所です。
概ね賛成でありますが少し反論。

MDMAは効能からすると「アンフェタミン+LSD」かと思います。またMDMAの危険性は「成分がメーカーによって違い不確定要素が多すぎる」ということにあると思います。

大麻について
癌やエイズについては痛み止めの役割というより、食欲減退及び体重減少、嘔吐等の消耗性疾患についての効果が期待されているかと思います。
痛み止めの点では、モルヒネ等の疼痛薬の様に耐性を獲得することがなく(あっても耐性がリセットできる)、薬価が安く、安全性が高い事がメリットではないでしょうか。
また、モルヒネが効かないような神経痛や、多発性硬化症やクローン病等治療方法がないものについて、進行を遅らせることができ、患者自身のQOL向上に役立つと私は思います。
また、医療用大麻を好む方々は健康志向とかベジタリアンの思考に近いと感じます。

陶酔性についてはアルコールの様な酩酊状態にはなりません。あんなに依存性が強く、加害性があるドラッグが24時間購入できる日本が怖いです。

ゲートウェイドラッグとの指摘もありますが、薬学的には既に否定されていますよね。問題はハードドラッグを売りたい人達が大麻も扱っている事にあります。ブラックマーケットとしては単価が安く、嵩張って、依存性もない大麻を売っていてもしょーもないかと。
まるご
2009年12月14日 17:16
ネネ様、コメント有難うございます。
記事がどうしても長くなってしまうので、かなり乱暴に端折った所があり、こういう反論はあるかなと思っておりました。概ねご指摘の通りかと思います。

MDMAについては、今報道で扱われているエクスタシーなどを「MDMA」と呼ぶ事に疑問を感じます。今の報道を見ると、「MDMA」と言われている錠剤は、コカインや覚せい剤などのハードドラッグなど、様々な不純物が入っているから危険だと言われています。これは間違っていませんが、MDMAそのものはソフトドラッグだという誤解を与えていると感じたので、敢えて、MDMA=覚せい剤と強調させて頂きました。

コメントが長くなったので、続きはその②へ。
2009年12月14日 17:18
お返事その②

大麻については、ご指摘の通りです。ただ、日本においては、薬理学的にはどうあれ、社会的にはゲートウェイドラッグとなっていると思います。もっと言えば、環境や条件によっては、煙草やアルコールも、ゲートウェイドラッグになると思っています。
日本において大麻は、文化的にみれば、反社会の一因子としての役割を担ってきています。そこが、文化的に「合法」といて扱われてきた煙草やアルコールとの違いだと思っています。その文化因子が、大麻使用と犯罪を強く結びつけていると考えています。
そこから、あらゆる段階を飛び越して、大麻を合法に持って行くのは、無理があると思っています。
薬理的に依存性が無くても、「薬」に依存性を示す人は、大麻にも強い依存性を示します。犯罪と知っていて尚、治療目的で無く手を出す事自体が、「依存性」と考えるべきでしょう。これは、抗不安薬や、マイケルみたいな麻酔薬依存の起こる病態と同じと思います。(これらの薬も、基本的には依存性を示す薬剤では無いので)
医療用に大麻を導入するのならば、生薬としてではなく、有効成分を抽出して、製剤化していくべきと思います。現状では、同じ作用を示す鎮痛補助薬や制吐剤、漢方などが一応存在するので、拙速に生薬のまま承認する必然性が無いと思います。(他剤とのクオリティの比較は出来ませんが)。今のまま研究が進めば、有効成分の抽出も近い内に出来ると思いますので、そこから治験してデータを集めて承認していけばよいと思います。
ただ、薬価が安くなるかどうかは、日本の薬価収載は、同行薬剤の薬価を参考に決める、という変なやり方なので、原価がどうあれ、安くはならないと思われますが…。

続きはその③へ
2009年12月14日 17:19
お返事その③

煙草については以前別記事で少し触れました。
薬理的には依存性もある立派なドラッグです。問題は、文化的にずっと容認されてきた、という事かと思います。大麻とは逆で、長年「良いもの」として容認されてきたものをいきなり180度方向転換するのは、困難な事と思います。
いきなり禁止薬物に持って行けば、多くの軋轢を生み、結果、犯罪に親和性を持ってしまう人を増やす結果になると考えます。実際、分煙時代は、喫煙室で吸っていた人が、敷地内禁煙にすると、途端に禁止区域で吸いはじめます。既に依存患者が多い今、徐々に啓蒙しながら、ソフトランディングで禁止に持って行くのが理想かと思います。

お酒はもっと難しいですね。
「食文化」の一端を担っている事、コミュニケーションツールの一翼を担っている事。多くの人は、節度ある摂取で問題を起こさない事。その反面、ごく一部の人が極端な依存性を獲得してしまう事。明らかな反社会行動に走ってしまう人がいる事。(私も夜間救急で酔っ払いに暴行を受けた経験があります)。
嗜好品としての地位が確立しており、禁止は困難かと思います。
だから、アルコールに起因する犯罪に対して、もう少し罰則を強化する事。酒の上で、という言い訳に対し、素面で起こしたよりも、より強い罰則で臨む位の対応は必要かと思います。そうやって、社会的文化的に、全て容認する空気を変えていく事は必要かなと思います。

反論もおありでしょうが、麻酔科医として、薬物濫用に潔癖で無いと危険な立場にあるので、その辺を差し引いて、「ちょっと極論だな」位の感じでお読み頂いて構いません。

長文失礼しました。
2009年12月14日 18:48
麻酔科医の先生でしたか。久々にワクワクしています(笑)
極論では有るかもしれませんが、特徴をとらえていましたのでOKかと思います。

私もマスコミの「MDMA」という報道には疑問を感じていました。所謂エクスタシーとかは麻薬のカクテルですからね。

ゲートウェイドラッグについてはまるごさんと同意見です。大麻、煙草、アルコール、薬理的なゲートウェイドラッグではないですが、ドラッグで有る以上ドラッグに対する精神障壁は薄れるという意味でゲートウェイになるかもしれません。
大麻については、大麻について知識がない人が「禁止されているのにこんなものか」と言うドラッグに対する勘違いが一番怖い所ですね。
マイケルについては個人的には薬物個々のと言うより、薬物への依存、即ちある種の精神病に近いような気がします。
2009年12月14日 18:48
大麻の製剤と言えば大塚製薬がアメリカでの販売権を獲得したサティベックスが代表格ですね。THC、CBDのみのようですが、大麻の場合CBCを含めその他諸々の成分の複合的な要素によって効果が変わる気もします。ですので、ユーザーの用途に合わせた品種選択がされているのでしょう。
まぁ医療大麻にしても味とかもポイントになるでしょうから、薬効の中に嗜好性も加味されているような気もします。
また、口腔摂取の場合効果が表れるまでに時間がかかると言うのも問題があるかもしれません。喫煙もしくはヴェポライザーの場合は10秒ほどで効果が表れるそうですので、服用量の調節が容易でしょう。
この辺についてはある種民間療法に近いニュアンスかもしれません。
大麻の効用が絶対とは私も思いません。ただ薬をはじめ治療法について患者側が選べられる時代ですので、選択肢の中に大麻があってもよいと感じます。

薬価については素人ですので、アメリカの情報の受け売りですが、日本の現状をお聞きする限り高くなりそうですね。医療大麻解禁の際は特例法でも作ってもらいたいです。

煙草、アルコールについても概ね同意です。
古くから日本の文化に根づいているものですので今から切り離すことは不可能でしょう。(大麻も神教・仏教から衣食住まで根づいたものでしたけど…)
ただ多くの方が、煙草・アルコールを嗜好品と捉え、大麻=覚醒剤と捉えてる日本の薬物教育は確実に失敗していると感じております。

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