脳脊髄液減少症、昨日の補足

昨日、


脳脊髄液減少症:検査は保険の対象 厚労省、周知徹底を通知へ


という記事を書いたのですが、
どうも、

「脳脊髄液減少症否定派」

という烙印を押されてしまったようで、
とあるサイトに張られて、
患者様方から御講義を頂きました。




私、麻酔科医なので、
ブラッドパッチの効果はよく知っております。

髄液漏の位置が分かれば、
自分でもブラッドパッチで
止める事も出来るかな、
と思います。



そして、
交通外傷後遺症の中に、
脳脊髄液減少症の
患者さんがいらっしゃる事も、
全く否定はしておりませんし、
そういう方がブラッドパッチで
改善されている事も
存じ上げております。


そういう方々は、
今まで多くの医療機関で
嫌な思いをされていると思うので、
医療に不信感を抱く事も
致し方の無い事と思いますし、
少しでも否定的な意見に
敏感になる事も、
当然かと思います。



また、
そういう苦労をされた方々が、
検査、治療の普及を
急がれる気持ちも、
十分わかります。



私は、そういう方々が、
今後不快な思いをしない為にも、
多くの人が治療に携われるような
ガイドライン制定が
重要と考えています。



その、ガイドラインが
まだ出来上がっていない段階で、
厚労省から
検査を促す勧告が出た事への、
懸念を示したのですが、
どうも、文章が下手で
分かりにくかったようです。







今はまだ、診断については
職人芸の域を出ておりません。

それは、実際多くの患者さんが、


「MRIで異常ない」


と言われるという経験で
分かっていらっしゃる
と思います。



綱渡りの名人が
綱を渡って見せて、

「この綱はちゃんと歩けるよ」

と言われても、
あとからすぐ続く事は出来ません。




厚生労働省が、
検査を推奨されていますが、
まだ一般化された
診断基準がありません。




MRIの感度、特異度はどれくらいか?
RI脳槽シンチだと感度、特異度はどれくらいか?


そういった数字も、
何もわかっていません。



だから、
スクリーニングでどんな検査をすべきか、
確定診断は何をすべきか、
診断にどれくらい熟練を要すのか、

そういった
ガイドラインが何もありません。


厚労省の言い方だと、
治療に関しても、
如何にもブラッドパッチ以外の
選択肢は無いような感じです。




乳癌に喩えるならば、

触診で癌と診断したら、
全員に乳房切除術をしなさい、

という勧告が、
厚労省から出された感じです。




ブラッドパッチについては、
まだ合併症に関する情報が
不十分です。


たとえば、
急性の髄液漏じゃなくて、
慢性の髄液圧が正常な髄液漏を
止めてしまった場合に、
水頭症などの合併症は
本当に起きないのか?
とか。

癒着による疼痛の
起こる頻度は何%か、とか。

神経根に流れ込んだ血液によって、
麻痺の起こる可能性、とか。
(栄養血管がスパズムを起こさないか?とか)

デュラパン(硬膜穿刺)してしまい、
くも膜下出血と
同じ状態になる危険性は?
とか。


デュラパンしなくても、
髄液漏の所から
血液が逆流していく
危険性は無いのか、
とか。






治療を一般化させるのであれば、
奏功率と合併症の頻度に関する情報は、
患者さんに説明する上で必須です。
(治験や保険外診療ならば別ですが)


保険診療で、
説明の無い合併症が出たら、
訴訟になります。



推奨した厚労省は、
それらにも責任を
持ってくれるのでしょうか?




これらの事を解決せずに、
性急に事を進めれば、
必ず揺り返しが来ます。



それは、必ず、
脳脊髄液減少症の方々にとって、
状況を決定的に悪くします。








まずは検査のガイドライン。

スクリーニングは何をすべきか。

確定診断は?

治療の為の
マッピングに適した検査は?

それらの検査をどのように読影し、
診断すべきなのか?

一般的な放射線科医ならば、
ほぼ診断が可能な位の読影基準。

そして、明確な診断基準。






そして、各治療の奏功率と合併症。








こういったものを網羅するガイドラインが出て、
それから、保険診療云々の話です。



ガイドラインは、
山形大学の嘉山孝正先生などが
研究して、作成を急いでおります。


脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究 研究期間の延長について



残念ながら、今年4月の期限までに、
有効な答えが出なかった、
という話が出たばかりです。



協力して貰える患者数が、

全然足りないそうです。




モルモットにされるのが嫌なのか、
情報があまり周知されていないのか。



とりあえず、

今厚労省が出すべきは、

研究への協力依頼です。











それから、やはり、
むちうちで多いのは
脳脊髄液減少症ではなく
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)
だと思います。


起立性の頭痛、つまり
座位や立位で悪化する頭痛

という症状より、

四肢の痺れなどを伴う、
全身性の疼痛、
あるいは後頚部痛、腰痛

などの症状の方が、
圧倒的に見る頻度が多い為です。


また、整形外科医によっては、
骨折も無いのに、数週に渡って
ソフトカラーを巻く人がいますが、
カラーで稼働制限を掛ける事が、
かえってトリガーポイントを作る
場合もあります。



そういう患者さんにまで、
やみくもに高額な検査を
推奨するのも、疑問が残ります。


また、当然画像上は問題ないので、
そこで、

詐病

というレッテルを貼られない為にも、

むちうち=脳脊髄液減少症

ではない事を、
周知しておく必要がある
と考えております。





そして、
保険目的の詐病が多いのも
交通外傷の特徴です。


同じような衝撃を、
転落などで負っても、
疼痛がそこまで長引く事は少ないのに、
追突に限って、
症状の遷延化が圧倒的に多い。

衝撃を考えれば、
たとえば、格闘家や
スポーツ選手などに
発症する頻度と、
ある程度相関して良いはずです。




「追突は必ず後遺症が出る」

という思い込みが
影響している事もあるでしょう

が、

残念ながら、
歩けない位悪い人が、
病院を出て見えなくなった途端
すくっと歩き出す
なんてのも、時々見かけます。




こういう物を排除するためにも、
ガイドラインが重要なのです。



もう少しすれば、
皆さんが納得いくガイドラインが
作成される事と思います。




医療従事者にとっても
患者さんにとっても、
何が本当に良いのか、
という事を、
行政は考えて頂きたいと思います。



正直、
今回は意見立場の違う人達の溝を、
深めただけの様な気がします。





因みに、私も
身内の中で
交通事故の後遺障害に
悩む人なども見てますので、

医師=患者の敵

と思わないで頂きたいな
とも思います。



(そう言っても、難しいでしょうけど…)




以上、現場から、まるごがお伝えしました。

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